たしかなこと

大波小波

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 開店時刻ぴったりに現れた客は、沙穂の期待を裏切り、真輝ではなかった。
「あの方は……」
 昨晩のパーティーで会った、少し意地悪なカッコいい人!
 青年は壁際の席に座ると、沙穂を呼んだ。
「この店のお勧めは?」
「はい。当店オリジナルブレンドは、多くのお客様にご好評をいただいております」
「じゃあ、それ。ブレンド、二つ」
「かしこまりました」
(二つ? お一人なのに?)
 マスターがコーヒーを淹れる間中、沙穂は青年のことが気になって仕方が無かった。
 なぜ、彼がここに?
 偶然? 
 トレイに二つのブレンドを乗せ、沙穂は青年の席へ運んだ。
「サンキュ。これを、マスターに渡してくれないか」
「……金貨!?」
 そこで青年は、声を張った。
「マスター。チップをはずむから、少し白洲くんを貸してくれ」
 沙穂が慌ててマスターに金貨を渡すと、彼は驚いて声をひそめた。
「メイプルリーフ金貨だ。この重さなら、10万円はするよ」
 君はやたらとお金持ちに縁があるねぇ、とマスターも驚きを隠せない。
「エプロン取って、お客様と話してきて。ウェイターがサボってる、と他のお客様に勘違いされちゃうからね」
「はい」
(でも僕は、真輝さん以外のお金持ちとのご縁は欲しくないけどな)
 沙穂は小さく溜息をつくと、カフェエプロンを外した。

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