たしかなこと

大波小波

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 沙穂は、真輝との会話を思い出していた。

『それに、僕はパーティーのための作法を身につけないといけないんじゃ……』
『大丈夫。今こうして私と話しているだけでも、着々と身についていっているよ』

(あれは、こういう事だったんだな)
 ただ遊ぶだけではなく、セレブとしての会話に必要な知識を、真輝さんは教えてくれてたんだ。
(僕自身がお金持ちのふりをするのは、気が引けるんだけど)
 それでも、よどみなく答える沙穂に、意地悪そうな青年は次第に黙ってしまった。
「沙穂、その調子でリラックスして。パーティーを楽しんで欲しい」
「はい」
(真輝さんがバックアップしてくれるから、頼もしいな)
 そんな沙穂を、ゲストは好意的に見てくれたようだった。
 彼の周りは、常に笑顔で包まれた。
 ただ一人、離れたところから見つめる青年が。
 先ほど沙穂に絡んでいた、意地悪な青年だ。
 彼は、給仕の使用人をつかまえて、沙穂について尋ねた。
「白洲という子は、源さまの何?」
「それにはお答えできかねます」
 その返事に、青年はポケットから光るものを取り出して給仕に握らせた。
 メイプルリーフ金貨だ。
「真輝さまの新しい想い人、とうかがっております」
 給仕はそっと答えると、皿を下げて行ってしまった。

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