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しおりを挟む郊外にある、源家の屋敷。
ベッドタウンがまるっと一つ入るほどの広い敷地に、その大きな屋敷は立っていた。
代々続く源家の曽祖父が建てた、西洋館だ。
「幸い空襲を免れてね。今は内装を変えたり、耐震補強工事を行ったりしている」
「そうですか」
重厚な門から入って、緑の木立を数㎞走っただろうか。
ようやく屋敷が見えてきた。
「すごい……、美しいですね」
「気に入ってくれて、嬉しい」
一見レンガ造りに見えるが、それは表面にわざと傷をつけたスクラッチタイルだ。
外から見える太い柱には、彫刻を施した大華石が豪華さを演出している。
突き出たバルコニーは優雅なアーチに支えられ、その下に数十名の男女が並んで当主の帰りを待っていた。
「おかえりなさいませ」
「おかえりなさいませ、真輝さま」
うやうやしく頭を下げる使用人たちの間を、真輝は歩く。
その隣に、沙穂を従えて。
(うわぁ。緊張する)
我知らず身をすくめ、沙穂は歩いた。
真輝にもらったバラの花束を、大切に胸に抱いて。
そのバラで、使用人たちは理解した。
(彼が、真輝さまの新しい想い人だ)
失礼のないようにしなくては。
緊張は、沙穂だけのものではなかった。
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