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しおりを挟む「ありがとうございます。でも僕は、一介の庶民です。源さまのお屋敷にお邪魔するなんて、とても」
(何て奥ゆかしい。やはり、素敵な子だ)
これまで付き合った者の中には、庶民に近い家柄の人間もいた。
そういった者ほど、源家の当主とお付き合いできることに、尻尾を振って飛びついてきたというのに。
「それより、このお財布をお返しします。やはり僕には、受け取れません」
「まだ言うか。そうだ、それをパーティーの支度金にしたまえ。エステに行き、髪を整え、フォーマルスーツを用意して」
本来なら、そういったことも私が用意すべきなのだろうが、と真輝は言う。
「君があんまり強情なものだから、致し方ない」
(強情なのは、源さまなんだけどな)
半ばあきらめの心地は、沙穂の財布を持った腕をわずかに下げた。
「では、行こうか」
「どこへです!?」
「エステサロンと美容院と、テーラーだ。マスター、すまないが白洲くんを借りるよ」
「いや、その。僕は今、勤務中です!」
沙穂は必死でマスターにすがったが、彼はにこにこと相変わらずご機嫌だ。
何せ、超有名人の富豪・源 真輝がお客様になってくれたのだ。
もしかすると、常連になってくださるかも、との思いに口元はほころんだ。
「白洲くん、構わないから行っておいで」
「マスター!」
あれよあれよという間に、沙穂は真輝に腕を取られ店外へと連れ出された。
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