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そんな風に、沙穂は思った。
素敵な人だった。
申し分のない整った顔立ちに、品の良いスーツ。
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背は高いし、ひ弱そうでない引き締まった体つき。
何より、僕がシャツを毎日洗っていることに、気づいてくれた。
褒めてくれた。
「何か、報われたな」
カフェで働いている以上、様々な客と出会い、別れる。
中には無理難題を吹っかけて来る人間もいるし、名刺を握らせあからさまに誘ってくる者もいる。
そういう類は、二度と会いたくない客だ。
(あのお客様も、大金の入った財布を置いて行った、困った人だけど)
あの人には、もう一度会いたい。
でも……。
「あの人、きっとアルファだよね。僕がオメガだって知ったら、嫌がるかも」
すん、と沙穂は鼻を吸った。
第二性がオメガの沙穂は、小さい頃から苦労してきた。
家庭の事情で大学進学も諦め、カフェでバイトをしながら自動車学校へ通う資金を稼いでいる。
真輝の残した300万円は、欲しくないと言えば嘘になる。
「でもそんな大金を、出会ってすぐの人に貰ういわれが無いから」
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