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しおりを挟む黄色いアヒルの浮かんだ広いバスタブに、士郎と秀実は寄り添ってくつろいでいた。
「ああ、ようやく胸のつかえが降りたよ。まさか兼田さんに、直に宣言することになるとは思わなかったけど」
「士郎さん、ちゃんと説明してください」
「驚かせて、すまなかったな。今夜の定例会では、組の進退を皆に投げたんだ。だから、少し遅くなった」
「解散、って。皆さん納得されたんですか?」
士郎は秀実の肩に頭を預け、うなずいた。
「最終的には、解ってもらえた。こちらからの条件が、良かったからかな」
「条件、ですか?」
「うん。カフェは真田が新しいオーナーになる。撮影班の連中は、今まで通り私が代表取締役だ」
秀実は、こちらに漂ってきたアヒルを手に取り、そのくちばしで士郎をつついた。
「なんだか、今までとあまり変わっていない気がするんですが」
「そうなんだ。でも、堅気になれば、取り巻く社会的環境が劇的に変わるよ」
まぁ、向こう五年間はまだ暴力団として、警察に目を付けられるんだけどね。
士郎はそう付け加えたが、犯罪を犯す組員はいないだろう、と信頼していた。
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