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しおりを挟む目をキラキラさせて話す秀実に相づちを打ちながら、士郎は心の中で一つ決意を固めていた。
(仁道会との抗争は、絶対に避けなきゃならないな)
私が抗争の果てに命を落とせば、秀実は泣くだろう。
そんな可哀想なこと、できやしない。
(と、なると。残す道は傘下に収まるか、もう一つ……)
「もう。士郎さん、聞いてますか?」
「え? あ、すまない。考え事をしていた」
「何か、心配事でもあるんですか?」
不安げな、秀実の顔。
いけないよ、秀実。
君にはいつも、笑っていて欲しい。
「今ここで、秀実にキスしたい、と思ってた」
「そ、そんなこと考えてたんですか!?」
ダメか? ではなく、いいだろう? と士郎は秀実の耳元で囁いた。
「え、えと。あの、その……」
「隙あり」
士郎は、秀実の唇を素早く捕えた。
「っん! ぅん、う……」
ざわめくカフェの雑音が、一瞬にして消えた。
コーヒーの香りのする、士郎さんのキス。
秀実は、幸せを噛みしめた。
長く、深く、口づけあっていた。
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