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しおりを挟む秀実は青原の注文を不思議に感じたが、これまで通り素直に従った。
その場に立ち両手を広げて、かかとを軸にし、ひらりと回転したのだ。
審査員たちは軽く笑い、青原も初めて笑顔を見せた。
(あれ? 僕、何か変なことやらかした?)
「いいよ。私からは以上だ。ありがとう」
青原監督がいい、と言ったのだ。
他の審査員には、もう尋ねることはない。
「では、水流くん。結果は後日お知らせします。退室してください」
「ありがとうございました」
秀実が退室し、他のテスト生が入って来たが、青原はさっきのように口をはさむことはしなかった。
「まずは、君の映画に関する思い入れを、聞かせてくれるかな?」
「はい! 小さい頃から、私は映画が大好きでした!」
そんなやり取りが始まり、青原も一応聞いていた。
しかし、頭の中は先ほどの秀実のことを考えていた。
(若いが、しっかりしている。俳優が現場の全てでないことを、ちゃんと承知している。そして……)
ひらりと回転して見せた姿を思い出し、にやりとした。
(愛嬌がある)
秀実は、確実に青原の心に、その印象を鮮やかに残していた。
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