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しおりを挟む「ただいま」
疲れた頭を抱えてドアを開けると、奥から秀実がそっと出てきた。
「お、おかえりなさい」
小さな声は、昨夜のことをまだ気にしているのだろう。
うぶな秀実の仕草に、士郎はつい笑顔になった。
「秀実くん、君のことを『秀実』と呼んでもいいかい?」
「は、はい。それで、あの」
言いたいことは、解ってる。
「私のことも、士郎さん、と呼んでくれるかい?」
「はい!」
二人の空気は、そこでようやく動き始めた。
士郎のバッグを受け取り、脱いだ靴を並べる。これは、後で磨く。
スーツを脱ぐ手伝いをし、ジャケットをハンガーに掛ける。これは、後でブラッシング。
こんな風に、少ないながらもこまごまとした仕事を、秀実は毎日やっていた。
「先にバスを使ってもいいかな? お腹空いてないか?」
「大丈夫です。どうぞ」
そして、秀実は服の袖と裾をまくる。
士郎の背中を流すためだ。
だが今日は、士郎がいつもと違うことを言い出した。
「秀実もおいで。一緒に入ろう」
「えっ!?」
おや、とした顔の士郎だ。
「裸になるのが、恥ずかしいか? 昨夜はあんなに乱れたのに?」
「いえ、あの、その、ちょっと」
にっこり笑って、いいからおいで、などと言われ、秀実はふらふらと服を脱ぎバスルームへ入った。
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