デュエット

大波小波

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1話 そして未来へ

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 啓は、世間の注目のただなかにいた。
 若き、天才外科医。
 眉目秀麗にして、エリートのアルファ男性。
 その啓が、iPS細胞から作製した心筋細胞シートの移植手術に成功した。
 治験自体はすでに複数の報告があるが、今回は世界初のオメガ男性に対してだ。
 10代という亜希の若さも、幼くして難病に苦しむ患者たちへの明るいニュースだった。
 亜希のプロフィールは、プライバシー保護のためにこれ以上明かされていない。
 ただ、経過は順調、とだけ報道された。
「以前の私なら、のぼせ上って得意満面になっていただろうな」
 そう、啓は振り返る。
 亜希の術後の容体が安定してから開かれた、記者会見。
 そこで啓は、ただただ自分を支えてくれた人々に感謝した。
 この治療法が出来上がるまでの、膨大な量の基礎研究に携わった人々。
 心筋細胞シートを作ってくれた、技術者たち。
 経験不足の自分に助言や指導をしてくれた、医師たち。
 そして何より。

『僕は、啓さんを信じています』

 命を預けて、手術を受けてくれた、亜希。
「私はこういった多くの方々に、心より感謝しています」
 そう言って、会見を締めくくった。

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