デュエット

大波小波

文字の大きさ
上 下
64 / 145

7

しおりを挟む

 啓は、我を忘れていた。
 激しい行為の後、心の力が抜けていた。
「好きです。啓さん」
「私も、亜希のことが好きだ」
 亜希の言葉にいざなわれるまま、ほろりと言の葉がこぼれた。
「好きです。啓さん……」
「好きだ。亜希……」
 無防備な魂が吐いた、素直な気持ちだった。
(ああ。私は、亜希が好きなんだ)
 ぼんやりとした意識のまま、自覚した。
 啓の言葉を聞いたか聞かずか、亜希は眠りに落ちつつある。
 その体を、啓は優しく拭き清めた。
 そうしていると、愛おしさが増してくる。
「亜希。裸のまま寝ると、風邪をひくぞ」
「んぅ……」
 力の抜けた亜希の体に、パジャマを着せる。
 彼はそのまま、啓の胸の中でぐっすりと寝入ってしまった。
 啓は、そんな亜希の前髪を掻き上げ、額にキスをした。
「好きだよ、亜希」
 自分自身に刻み込んで、眠った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

安心快適!監禁生活

キザキ ケイ
BL
ぼくは監禁されている。痛みも苦しみもないこの安全な部屋に────。   気がつくと知らない部屋にいたオメガの御影。 部屋の主であるアルファの響己は優しくて、親切で、なんの役にも立たない御影をたくさん甘やかしてくれる。 どうしてこんなに良くしてくれるんだろう。ふしぎに思いながらも、少しずつ平穏な生活に馴染んでいく御影が、幸せになるまでのお話。

お世話したいαしか勝たん!

沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。 悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…? 優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?! ※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。

運命の息吹

梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。 美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。 兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。 ルシアの運命のアルファとは……。 西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。

生意気オメガは年上アルファに監禁される

神谷レイン
BL
芸能事務所に所属するオメガの彰(あきら)は、一カ月前からアルファの蘇芳(すおう)に監禁されていた。 でも快適な部屋に、発情期の時も蘇芳が相手をしてくれて。 俺ってペットか何かか? と思い始めていた頃、ある事件が起きてしまう! それがきっかけに蘇芳が彰を監禁していた理由が明らかになり、二人は……。 甘々オメガバース。全七話のお話です。 ※少しだけオメガバース独自設定が入っています。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

【R18】番解消された傷物Ωの愛し方【完結】

海林檎
BL
 強姦により無理やりうなじを噛まれ番にされたにもかかわらず勝手に解消されたΩは地獄の苦しみを一生味わうようになる。  誰かと番になる事はできず、フェロモンを出す事も叶わず、発情期も一人で過ごさなければならない。  唯一、番になれるのは運命の番となるαのみだが、見つけられる確率なんてゼロに近い。  それでもその夢物語を信じる者は多いだろう。 そうでなければ 「死んだ方がマシだ····」  そんな事を考えながら歩いていたら突然ある男に話しかけられ···· 「これを運命って思ってもいいんじゃない?」 そんな都合のいい事があっていいのだろうかと、少年は男の言葉を素直に受け入れられないでいた。 ※すみません長さ的に短編ではなく中編です

愛しているかもしれない 傷心富豪アルファ×ずぶ濡れ家出オメガ ~君の心に降る雨も、いつかは必ず上がる~

大波小波
BL
 第二性がアルファの平 雅貴(たいら まさき)は、30代の若さで名門・平家の当主だ。  ある日、車で移動中に、雨の中ずぶ濡れでうずくまっている少年を拾う。  白沢 藍(しらさわ あい)と名乗るオメガの少年は、やつれてみすぼらしい。  雅貴は藍を屋敷に招き、健康を取り戻すまで滞在するよう勧める。  藍は雅貴をミステリアスと感じ、雅貴は藍を訳ありと思う。  心に深い傷を負った雅貴と、悲惨な身の上の藍。  少しずつ距離を縮めていく、二人の生活が始まる……。

サッカー少年の性教育

てつじん
BL
小学6年生のサッカー少年、蹴翔(シュート)くん。 コーチに体を悪戯されて、それを聞いたお父さんは身をもってシュートくんに性教育をしてあげちゃいます。

処理中です...