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しおりを挟む瑠衣を胸の中に抱きしめ、寿士はしばらく黙っていた。
彼の髪を静かに撫でながら、呼吸を鎮めていた。
「瑠衣、聞いてたろ」
「うん」
「瑠衣は、俺の最高のパートナーなんだ。もう、愛人じゃ収まりきれなくなってるんだ」
「でも」
「父さんは、必ず説得するから」
「……」
だから。
「だから俺と、結婚して欲しい。愛してる、瑠衣」
「寿士さん……」
でも、僕は。
「でも僕は、家を追い出された身で。何のとりえもない、オメガで」
「結婚して、楠家に入ればいい。取柄なんて、今から身につければ問題ないさ」
「……」
寿士さん、と瑠衣は言いたかった。
だが、涙が次々と湧いて出て、喉が詰まって何も喋れない。
「う、うぅ。んっく、ふぅ。うぅう……」
「それ、嬉し涙だよね? 瑠衣」
瑠衣は、せわしく頷いた。
ただ泣きながら、首を縦に振るしかなかった。
「瑠衣はもう、愛人じゃない。俺の、婚約者だ」
寿士は、はっきりそう言った。
(ああ、やっと言えた)
愛してる、瑠衣。
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