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「こ、今夜はエッチしませんから! お客様は、ケーキ買ってくれませんでしたから!」
「危ないところを、救ってやったじゃないか」
店長に、犯されそうだったじゃん。
そう言う寿士の言葉に、瑠衣は厳しい現実を思い出した。
「あぁ。また新しいバイト、探さなきゃ」
「あそこ、辞めるの?」
「辞めます。店長が怖いので」
「じゃあ、俺が新しい仕事を斡旋してやるから」
「お客様が?」
胡散臭い話だ。
探るような瑠衣の視線をかわし、寿士は紅茶を差し出した。
「砂糖、入れる?」
「バイトの話じゃなかったんですか!?」
「何だ、やっぱり仕事欲しいんだ」
それは、そうです、と瑠衣は下を向いた。
家賃に公共料金。交通費、スマホの通信料に、発情抑制剤の購入費。
お金は、いくらあっても足りないのだ。
「貧乏は辛いね」
(貧乏とか、ハッキリ言う!?)
瑠衣は、話しはここまで、と立ち上がりかけた。
だが、寿士の言葉に引き留められた。
「月100万円。どう?」
「100万……?」
そんな高額バイト、聞いたことが無い。
怪しい。
怪しすぎる。
(でも、このお金持ちのお客様なら、そういう仕事を知ってるのかも)
恐る恐る、瑠衣は寿士に訊ねた。
「どんな、バイト、ですか?」
「愛人。俺の愛人になってよ。100万あげるから」
「嫌です!」
「速攻で断る? こんな美味しい話、他にないよ」
ねぇ、と寿士は急に甘い声になった。
「俺の名前は、楠 寿士。恋人と別れて、寂しいんだ。心の隙間を、瑠衣に埋めて欲しいんだよ」
そこで初めて、瑠衣は寿士の名前を知った。
妙に優しいその声音が、怪しかった。
「危ないところを、救ってやったじゃないか」
店長に、犯されそうだったじゃん。
そう言う寿士の言葉に、瑠衣は厳しい現実を思い出した。
「あぁ。また新しいバイト、探さなきゃ」
「あそこ、辞めるの?」
「辞めます。店長が怖いので」
「じゃあ、俺が新しい仕事を斡旋してやるから」
「お客様が?」
胡散臭い話だ。
探るような瑠衣の視線をかわし、寿士は紅茶を差し出した。
「砂糖、入れる?」
「バイトの話じゃなかったんですか!?」
「何だ、やっぱり仕事欲しいんだ」
それは、そうです、と瑠衣は下を向いた。
家賃に公共料金。交通費、スマホの通信料に、発情抑制剤の購入費。
お金は、いくらあっても足りないのだ。
「貧乏は辛いね」
(貧乏とか、ハッキリ言う!?)
瑠衣は、話しはここまで、と立ち上がりかけた。
だが、寿士の言葉に引き留められた。
「月100万円。どう?」
「100万……?」
そんな高額バイト、聞いたことが無い。
怪しい。
怪しすぎる。
(でも、このお金持ちのお客様なら、そういう仕事を知ってるのかも)
恐る恐る、瑠衣は寿士に訊ねた。
「どんな、バイト、ですか?」
「愛人。俺の愛人になってよ。100万あげるから」
「嫌です!」
「速攻で断る? こんな美味しい話、他にないよ」
ねぇ、と寿士は急に甘い声になった。
「俺の名前は、楠 寿士。恋人と別れて、寂しいんだ。心の隙間を、瑠衣に埋めて欲しいんだよ」
そこで初めて、瑠衣は寿士の名前を知った。
妙に優しいその声音が、怪しかった。
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