両片思いのI LOVE YOU

大波小波

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「あと5個もあるよ。諦めたら?」
「ノルマなんです。売れ残ったら、バイト代から引かれるんです」
 そこで、お客様、買ってくれませんか? と来た。
 寿士は、迷って考えるふりをしながら、彼の体を眺めていた。
 少し瘦せすぎな気もするが、白い肌はきめが細かい。
 バランスの取れた骨格が、美しい。
 その肉の薄さにこたえる寒さに震えながら、サンタは訴える。
「今なら明日から使える20%OFFのクーポンを付けますよ!」
「いらない」
「一個でいいですから」
「いくら?」
「3000円です」
 安いな、と思った寿士だ。
 裕福な家庭に生まれ育った彼にとっては、3000円どころか10000円も小銭に等しい。
「でも、荷物になるから嫌だな」
「ぼ、僕がお客様のご自宅までお届けしますから!」
 あと一押しの寿士に、サンタは食い下がった。
 少々仰け反りながら、寿士は彼の顔を見た。
(本気か? 自宅へ、お持ち帰り?)
 寒いので唇は青いが、整った形をしている。
 鼻も、すっと高い。
 少し色の淡いショートヘアも、好みだ。
 何より、目が良かった。
 久しぶりに見る、綺麗な眼差し。
 つぶらな瞳が、うるうるしている。
「じゃあ、買ってあげる」
「ありがとうございます!」
 商談は、成立した。

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