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「三村さんが、どうして料理教室に!?」
「お料理がもとで、恋人さんと別れちゃったらしいんです」
 杏は気の毒そうに三村の身の上に起きた出来事を語ったが、真の心中は穏やかではなかった。
(これを機会に、三村さんが杏に近づく恐れがあるな)
「帰りに、お茶を御馳走になりました」
「何ッ!?」
 ますます持って、放っておけない。
「杏。三村さんはいい人だが、君は私の何だ?」
「家政夫です」
 違うだろう、と真は頭を抱える思いだ。
「恋人、だ。だから、三村さんとは必要以上に親しくしないでくれ」
「あ……」
 真さん、もしかして。
(もしかして、妬いてくれてるのかな?)
 これを嬉しい、と思ったら、僕は悪い子なんだろうか。
 杏は、大丈夫です、と返した。
「真さんが僕のことを、その。恋人って思ってくれてる間は、絶対に浮気なんかしませんから」
「そこは、信頼してるよ」
 杏が、浮気。
 とても考えられないことだ。
(もう、やめよう。せっかくの料理が、まずくなる)
 真は燗を飲み干し、口の中と頭の中を注いだ。

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