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しおりを挟むショッピングの後は、映画を観て。
少し寒い街を、頬を赤くしながら歩いて。
「杏、私のコートのポケットに手を入れて」
「こう、ですか?」
そうすると、真の大きな手のひらが、杏の手を握ってくれた。
「デートでは、手をつなぐ。そうだろ?」
「あ……」
頬どころか、耳まで赤くして、杏は喜んだ。
(生まれて初めての、デート。そして、手をつないじゃった!)
「……やはり、少し照れるな」
「真さんも、ですか?」
「デートで自分から手をつないだことは、無いんだよ」
杏といると、初めてだらけになるな。
身も心も温かくしてくれるこの少年を、真は大切に感じていた。
杏の方から提案されたデートだが、無心で楽しんでいる自分がここにいる。
「真さん、そろそろ帰りましょう。僕、お夕食の準備があります」
「それは心配に及ばないよ。ちゃんとレストランを予約してある」
たまには家事を休むといい、と真は言ってくれる。
そんな彼に、杏は深い思いやりを感じた。
「僕、嬉しいです」
「嬉しいのは、私の方もだよ」
「お料理はやっぱり、ステーキですか?」
「私だって、いつもいつもステーキを食べているわけじゃないんだ」
冗談を言い合いながら入ったのは、一流ホテルの料亭だった。
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