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しおりを挟む杏は、まるで手品のようにエプロンのポケットからバンダナを出した。
それを三角形に畳み、頭に巻く。
マスクを着け、ビニール手袋をはめ、肩に下げていたバッグから皿と包丁を取り出した。
(包丁なんか持ち込ませたんですか?)
(まさかそんなものを持ってるなんて思いませんでしたから!)
副店長と人事部長の小声を聞きながら、真は杏の手先を見ていた。
器用にパイナップルを切り、盛り付ける。
バッグの中には密封容器も入っており、杏はそこからカットされたイチゴやキウイ、リンゴなどを出しては、くりぬかれたパインに上手に飾り付けていった。
最後に、フルーツフォークを出して、できあがり。
「できました!」
その杏の笑顔があまりに良かったので、真は思わず拍手をしていた。
「見事だ。味見をしても?」
「もちろんです、どうぞ」
まずは、パイナップルを口に運んだ。
青過ぎず、熟れ過ぎず。絶妙な風味の、良いパインだ。
次に、リンゴを口にした。
かすかに、レモンの味がする。
色が変わって見た目が悪くならないよう、あらかじめ果汁をかけてあったに違いない。
「美味い」
「ありがとうございます!」
杏は、まるで採用されたかのように喜んだ。
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