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「卒業おめでとうございます、弦先輩。お別れですね」
「ありがとう。とはいえ、寮を出るのは一週間後だ」
「大学でも、寮生活なんですか?」
「うん。今度は、1人部屋だけどな」

 ほんのりとした、笑顔で。
 淡々と話す、二人。
 本音を言えば、二年間留年して千尋と一緒に卒業したいくらいの、弦だ。
 正直に言えば、行かないでと泣いて縋って、弦を引き留めたい、千尋だ。
 だが二人は、精いっぱいの意地を張って、平気なふりを演じていた。
 別れの辛さに、耐えていた。

「俺は柔道に生きることに決めたが、千尋はどうなんだ? 進路は」
「僕ですか? 実はですね……」
 千尋はそこで、驚きの選択を弦に開いて見せた。
 自分でも迷っていたのだが、今ここに彼と二人になり、心が定まったのだ。

「先輩と同じ大学を志望します! スポーツドクターになって、世界一を目指す弦先輩を、医学的にサポートします!」
「な……!?」
 これ以上ないくらい驚いた後からは、火山の噴火のように喜びが爆ぜ出した、弦だ。
 千尋と固い握手を交わし、先に巣立つ先輩としての言葉を贈った。

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