110 / 113
3
しおりを挟む旧庭園は、この北陽高校が新しく建て替えられる前からある、和風庭園だ。
古い校舎と共に処分するのは惜しい、と庭園だけ残された。
そして、そこに育つ大きなクロマツの木は、樹齢300年と伝えられる名木だ。
旧庭園は離れにあるため、あまり人は赴かないが、クロマツの存在は誰もが知るところだった。
だがしかし。
「なぜ俺が、今からクロマツまで、行かなきゃならんのだ!?」
「行けば、解るから!」
「……また何か、企んでいるな?」
「いや、これは、その。行けば海江田クン、ハッピーになれるよ!?」
くだらん、俺は帰るぞ、とバッグを持ち直した弦に、坂井は畳みかけてきた。
「そこに、河島クンが待ってるとしても!?」
「何で千尋が、クロマツで俺を待ってるんだ!?」
「卒業式なのよ? 可愛い後輩と、特別なお別れとか、したいと思わない?」
話の流れから見ると、また坂井が余計なおせっかいをしたようだ。
しかし彼女の悪だくみも、これが最後かと思えば微笑ましい。
「ありがとう、坂井」
「どういたしまして!」
教室から去って行く弦の背中を、坂井は笑顔で見送った。
11
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
【BL】はるおみ先輩はトコトン押しに弱い!
三崎こはく
BL
サラリーマンの赤根春臣(あかね はるおみ)は、決断力がなく人生流されがち。仕事はへっぽこ、飲み会では酔い潰れてばかり、
果ては29歳の誕生日に彼女にフラれてしまうというダメっぷり。
ある飲み会の夜。酔っ払った春臣はイケメンの後輩・白浜律希(しらはま りつき)と身体の関係を持ってしまう。
大変なことをしてしまったと焦る春臣。
しかしその夜以降、律希はやたらグイグイ来るように――?
イケメンワンコ後輩×押しに弱いダメリーマン★☆軽快オフィスラブ♪
※別サイトにも投稿しています
たまにはゆっくり、歩きませんか?
隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。
よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。
世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる