弦先輩と千尋の日常は晴れ時々くもり所によりドキドキするでしょう！ ～硬派先輩×可愛い後輩 幼馴染だった二人は恋に落ちていく……のか？～

2

　生徒らはそれぞれのクラスに戻り、弦は最後のホームルームを受けた。
　担任の山本は実直な性格なので、涙を見せたり感情的になったりすることはない。
　しかし、贈る言葉のひとつひとつは確かな愛情にあふれ、卒業生の胸に染み入った。
「悩んだり迷ったりした時は、いつでも帰っておいで。私はいつまでも、君たちの味方だ」
　そんな温かい言葉で、送り出してくれた。
（いろいろあったが、山本先生には世話になった。いい先生だったな）

　弦は結局、進学する方向に落ち着いた。
　就職して早く一人前になりたい、と言い張る弦を、山本と体育教師・田中が踏みとどまらせたのだ。
　田中の母校である、柔道強豪校の大学へ進み、その道を究めることにした、弦。
　彼の決意を、一番喜んでくれたのも、山本だった。

　そんなホームルームも終わり、クラスメイト達はそれぞれで別れを惜しみ始めた。
　写真を撮ったり、話し込んだり。
　握手をしたり、抱き合って泣いたり。
　彼らをぐるりと見渡した後、弦はバッグを持って立ち上がった。
「さて。行くか」
「ちょっと、待ったぁー！」
「坂井……」
「海江田クン！　旧庭園の、マツの木に行って！」
　最後まで、腐女子・坂井は弦に絡んできた。