弦先輩と千尋の日常は晴れ時々くもり所によりドキドキするでしょう！ ～硬派先輩×可愛い後輩 幼馴染だった二人は恋に落ちていく……のか？～

8

　9時を過ぎ、次第に廊下を歩く人の姿が多くなってきた。
　いよいよ文化祭の始まりだ。
「あの……弦先輩は、いますか？」
「千尋！？」
　何と、開店して真っ先に訪れた客は、あろうことか千尋だった。

　河島くんよ、海江田の後輩だ、などの囁き声が上がる。
　そんな中、千尋は緊張した面持ちで、飾り立てられた教室へ入ってきた。
　三年生側も初めての客にとまどい、なかなか千尋をエスコートできない。
　そこに、制服にフリルやリボンを付けたメイドコスチュームの坂井が、ずいと出た。

「お帰りなさいませ、ご主人様！　河島クン、よく来てくれたね」
「坂井さん」
　顔見知りの坂井に声を掛けられた千尋は、ホッとした。
　リラックスして周囲が解かるようになってくると、奥に弦の姿を探し出すことができた。
　髪はオールバックで、改造制服のタキシード。
　同じ格好をした男子は他にもいたが、弦ほど際立って目立つ人間はいなかった。

（弦先輩、すごい！　カッコイイよ、先輩！）
　千尋の視線の、ぱぁっと晴れた笑顔に、坂井はほくそえんだ。
（初めて見る先輩の執事姿に、ときめきを覚えてしまう後輩……。芳しいわ～ッ！）
「さあさあ！　河島クンは特別に、海江田執事にフットマンになってもらおうね！」
　坂井にぐいぐい押され、千尋は弦の元へやって来た。