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「解かった。では千尋、お前も体操服になれ」
「ええッ!?」
互いに、おかしな趣味を持っているものだと考えながら、それぞれ長ランと体操服に着替えた。
音楽が無いと踊りにくいな、と言う弦のために、千尋は曲を口ずさみながらくるくる回る。
いろんなことがあった一日だったが、終わってしまえば楽しい思い出だ。
弦が、しんみり噛みしめたところで、突然千尋が膝を落とした。
「どうした、千尋」
「ごめんなさい。ちょっと足が、まだ痛くて……」
は、と弦は思い出した。
そういえば、千尋は足をくじいていたのだ。
姿勢を低くし、弦は彼に寄り添った。
「無理をさせて、すまなかったな」
「ほとんど、大丈夫なんですけど。すみません」
痛いだろうに、強がってみせる千尋だ。
その姿に、弦は胸が熱くなった。
本当に、逞しくなったものだ。
(俺の応援がなくても、もう一人で立派にやっていけるんだな、千尋)
痛みが和らいだのか、千尋は顔を上げて弦を見つめた。
「先輩、ありがとうございます。ずっとずっと、僕だけを見て、応援してくれてましたよね。ちゃんと、伝わりました。先輩の気持ち」
「千尋……」
お互い、これまでいろいろな事件があった。
だが、今こうして、目と目で通じ合えるのだ。
こんなに嬉しい事はなかった。
「ええッ!?」
互いに、おかしな趣味を持っているものだと考えながら、それぞれ長ランと体操服に着替えた。
音楽が無いと踊りにくいな、と言う弦のために、千尋は曲を口ずさみながらくるくる回る。
いろんなことがあった一日だったが、終わってしまえば楽しい思い出だ。
弦が、しんみり噛みしめたところで、突然千尋が膝を落とした。
「どうした、千尋」
「ごめんなさい。ちょっと足が、まだ痛くて……」
は、と弦は思い出した。
そういえば、千尋は足をくじいていたのだ。
姿勢を低くし、弦は彼に寄り添った。
「無理をさせて、すまなかったな」
「ほとんど、大丈夫なんですけど。すみません」
痛いだろうに、強がってみせる千尋だ。
その姿に、弦は胸が熱くなった。
本当に、逞しくなったものだ。
(俺の応援がなくても、もう一人で立派にやっていけるんだな、千尋)
痛みが和らいだのか、千尋は顔を上げて弦を見つめた。
「先輩、ありがとうございます。ずっとずっと、僕だけを見て、応援してくれてましたよね。ちゃんと、伝わりました。先輩の気持ち」
「千尋……」
お互い、これまでいろいろな事件があった。
だが、今こうして、目と目で通じ合えるのだ。
こんなに嬉しい事はなかった。
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