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しおりを挟む「千尋、いつまで寝てるんだ。朝だぞ」
弦の声に、千尋は布団から顔をのぞかせ、ゆっくりとまばたきをした。
「弦先輩……」
ぐんにゃりと、覇気のない声。
「起きろ、朝飯だ。弁当の準備も、あるんじゃないのか?」
もぞもぞと、なかなか動き出さない千尋。
おかしい。
この時刻なら、飛び起きてバタバタと慌てるはずだが。
「どうした、千尋。具合でも悪いか?」
ごめんなさい、と千尋は頭からすっぽりと掛布を被ってしまった。
「先輩……体が動かない……」
「何ィ!?」
「昨夜の特訓、すごかったから……体がだるくて痛くて、動けないです……」
しまったぁ!
その日、弦は初めて弁当を持たずに登校した。
まさか、本当に弁当抜きになってしまうとは。
千尋の担任教師には、後輩が欠席する旨を伝えたが、なぜかと問われて一瞬喉を詰まらせた。
(俺のせいだ、とは言えん!)
ちょっと風邪をひいた、と嘘をついて職員室を後にした。
過ぎたるは及ばざるがごとし。
しかし幸いなことに、一日休んだおかげで千尋のキャラ弁熱は冷めた。
その後は1週間に一回程度に、頻度が落ちたという。
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