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しおりを挟む「暑くて寝られん!」
がばり、と起きだした弦に千尋も目が覚め、手元のリモコンを探った。
「先輩、エアコン付けましょうか?」
「いや、いらん」
エアコンの冷風は、あまり好きではない弦なのだ。
掛布を手に、寝室を出ていく。
「どうするんです?」
「窓を開けて、リビングで寝る」
ベランダへのガラス戸を全開にし、弦は横になった。
瞼を閉じると、冷たい風がそろりと入ってきて心地いい。
そんな弦の姿に、千尋は心を痛めた。
(眠れないから、食欲も落ちちゃったんですね)
先輩を、元気づけてあげたい。
そう考えた千尋は起き出し、キッチンの照明をつけた。
「ん? 千尋、どうした」
「ごめんなさい。明るいと、眠れませんか?」
「いや、そんなことはないが」
弦は、ごそりと身じろいだ。
首だけよじって、キッチンへ向ける。
千尋は、何やら作り始めたようだった。
「こんな夜中に、料理か?」
「明日のお弁当の、下ごしらえです。すぐに済みますから」
千尋はいつも朝早く起きては、弦の分まで弁当を作る。
毎日ありがたくいただいてはいるが、下ごしらえまでするとは、明日は一体どんなご馳走になるのやら。
楽しみに感じつつ、弦は千尋の立てる物音を聞きながら、安らかな眠りに就いた。
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