弦先輩と千尋の日常は晴れ時々くもり所によりドキドキするでしょう！ ～硬派先輩×可愛い後輩 幼馴染だった二人は恋に落ちていく……のか？～

１話 弦先輩に求められたら拒めないよ！

　長いと思っていた夏休みも終わり、新学期が始まった。
　通常の時間割に戻る前にホームルームが設けられ、席替えにクラス中が浮足立っていた。
　誰と席が離れてしまっただの、誰が隣になっただのと騒がしい。
　そんな中、弦だけは淡々と、自分の机を新しいポジションに運んだ。

（フッ、くだらん）
　隣の席が誰になろうと、関係ない。
　己は、己なのだ。
　それくらいで一喜一憂するクラスメイトの幼さに、弦は呆れていた。
　だがしかし。

「海江田ク～ン！　よろしくね！」
「坂井！？」　
　俺の隣が、坂井！
　席に落ち着いた彼女の姿に、弦は動揺した。
　坂井。
（俺と千尋の仲を、BL関係に仕立て上げようと画策する、やっかいな女子！）

「ねぇ。あの本、どうだった？　面白かった！？」
「あんなものを、学校に持ってくるな！」
　弦は、一学期末に坂井が無理やり貸した本を、思い出した。
　男性同士の恋愛を赤裸々に描いた、BL小説。
　あれがきっかけの一つで、千尋に妙な感情を覚えるようになってしまったのだ。

　しかし坂井は、確かな手ごたえを感じていた。
（あんなものを、っていう事は、中をちゃんと読んだ、って意味だよね）
　これは一歩前進だ。
（さっそく、友達同士で共有しなくちゃ！）
　休み時間を楽しみに坂井は鼻歌を歌い、新たに課せられた試練に弦は脂汗を流していた。