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しおりを挟む千尋が目線を上げると、そこにはまだ半裸のままの弦の姿があった。
(なんで、まだ服を着てないんですか!?)
全裸よりはましだが、下着の上からでも体の線が見えてしまう。
「げ、弦先輩。あの、その。あの、ですね……」
しどろもどろで、何を言っているのか解らない、千尋だ。
弦もまた、落ち着かない気持ちを持て余していた。
風呂上がりの千尋。
夏なので、半袖にハーフパンツという、露出の多いファッションだ。
そこからのぞく、滑らかな白い肌。
濡れた洗い髪が、やけに色っぽい。
「弦先輩……」
「ち、千尋」
先程あんな淫らな動画を見てしまったので、劣情が頭をもたげてくる。
千尋が、ソファの弦の横に腰掛けてきた。
(これは。この状況は、まずいぞ!)
その時、ものすごく大きな音で、弦の腹がぐぅううと鳴った。
「げ、弦先輩。お腹、空いたんですね!?」
「そうだ! そうだな! いやぁ、柔道は腹が減るスポーツだ!」
勢いよくソファから立ち上がった千尋は、焦ってキッチンへ走った。
「ああ、危なかった。あのままだったら、僕……!」
ムードぶち壊しの、弦の腹の虫だ。
だが、おかげで二人の穏やかな日常は、守られた。
弦の腹は、キッチンまで聞こえるかと言うくらい、ぐうぐう鳴り響いていた。
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