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『お帰りなさいませ、ご主人様。お食事になさいますか。それとも、エッチになさいますか?』

「何だ、これは!?」
 メイド姿の女優。
 延々と続く、あられもないベッドシーン。
 早送りで確かめてみたが、どこにも名作のメの字もない。

「こんなものを観ていたのか。どうりで、慌てて帰ったはずだ」
 高校生にもなると仕方がない、と弦は苦笑いしたが、夏休み前に見たメイド服の千尋を思い出してしまった。
 男優と絡み合う女優に、千尋の姿が被る。
「いかん!」
 弦は、慌てて再生を止めた。
 封印するようにディスクをパッケージに戻し、元の場所へ押し込んだ。

 それと同時に、千尋が風呂から上がる気配がする。
「間一髪だ!」
 しかし、風呂からあがってきた千尋は、いつもより顔が赤かった。
 シャワーを浴びていても、バスタブに浸かっていても、思い出されるのは先ほど観た動画のことばかりだったのだ。

 そして、大好きな弦先輩のこと。
 佐藤くんや千葉くん、野村くんはどう感じていたんだろう。
 やっぱりあの男優のように、女性に施してもらったり、その体を抱いたりしてみたい、と思ったのかな。
 でも、僕は。
 男だけど、同じ男性の弦先輩を考えた。
(そして。そして……抱かれてみたい、とか?)
 うわぁ、と千尋はタオルで顔を覆った。
(僕、おかしいのかな!?)

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