弦先輩と千尋の日常は晴れ時々くもり所によりドキドキするでしょう! ~硬派先輩×可愛い後輩 幼馴染だった二人は恋に落ちていく……のか?~

大波小波

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1話 食事にしますか? それとも……

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「あっ!」
 朝食の席、サラダのミニトマトを取りこぼした千尋が、慌てた声を上げた。
 トマトはテーブルをぽんぽんと跳ね転がった後、あと一息というところで、床に落ちていった。
「あ~あ」
 しゅん、としてフォークをくわえる千尋の姿。
 弦は笑うと、そんな可愛い後輩に声をかけた。
「そう、がっかりするな。俺のトマトをやるから」
「えっ」
 顔を上げると、テーブルを挟んだ向こうから、千尋の皿にミニトマトが乗せられた。

「そんな、いいですよ。先輩は、これから大暴れするんでしょう?」
「遠慮するな。好物を最後に食べるのは、お前の癖だったな」
 じゃあ、と千尋も笑顔でトマトを口に運んだ。
(弦先輩、ちゃんと僕のこと覚えててくれたんだな)
 幼い頃の自分が、今も彼の心の中にしまってある。
 そう思うと、幸せな心地の千尋だ。
 日常に、ひとしずく落とされた蜂蜜のように。
 ほのかに甘い、ひととき。

 ただ、それ以上のこととなると、まるで見当もつかない。
 想像できない、というか。
 きっかけがない、というか。
 先輩と後輩の関係からは、未だ抜け出せないでいる。
 それでも千尋は、幸せだった。

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