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しおりを挟む見当もつかないまま、ふと足を踏み入れたそこは、行き止まりだった。
だが、行き止まりより驚いたのは、そこに待ち構えている人間の姿だ。
「女装男子!?」
派手なメイクに、ずれたカツラ。
そして、ぴちぴちの魔法少女コス。
弦だけでなく、対面した女装男子も、ぎょっとした顔をしてこちらを見ている。
小さな声で、ゲッ、海江田さん! とつぶやいた男子生徒は、千尋の友人・佐藤だ。
強面の弦に怯んだ佐藤だったが、次の瞬間には甲高い声で叫びながら迫ってきた。
「先輩、キスして~ッ!」
身をくねらせながら迫ってくる姿は、異様な迫力さえ醸している。
不意を突かれた弦は、佐藤にすがりつかれてしまった。
「やッ、やめろ! 離せ。離さんか!」
「先輩、好きスキ~!」
タコのように尖らせた唇が、顔面に近づいてくる。
「やめんかぁー!」
足をもつれさせながら、弦は必死で佐藤から逃れ、再び通路へと戻った。
「恐ろしい罠だ!」
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