21 / 80
11
しおりを挟む白南風祭・当日、弦は千尋のクラスの列に並んだ。
迷路は、そこそこ賑わっているようだ。
(赤い小鳥の人形が、無くなってしまうかもしれない!)
弦は気を揉んだが、最後の一個というところで、手に入れることができた。
「こんなものを欲しがるとは。千尋も、まだまだ子どもだな」
しかし、とたんに胸の中に倒れこんできた彼を思い出した。
すらりとした手足に、柔らかい髪。
そして、とても良い香りがした。
子どもだとばかり思っていたが、いつの間にあんな……あんな……。
ぼんやりとしたところに突然、男子生徒の悲鳴が教室内から響き、弦は我に返った。
「なぜ、迷路なのに悲鳴が?」
次いで、げらげらと笑い声が聞こえる。
何か仕掛けがあるのだな、と弦は考え、興味が湧いた。
だが背後から、ささやき声が聞こえる。
『海江田さんだ』
『河島の先輩?』
『声、掛けてみるか?』
『いや、怖いって!』
(中の様子は気になるが、迷路に放り込まれる前に退散するか)
弦は千尋のためにゲットしたストラップを、ポケットに入れた。
そして列から出ようとしたが、有無を言わさず女生徒に背中を押された。
「河島くんの先輩ですよね? どうぞ、中に入ってください!」
「いや、俺は……」
「河島くんも、中にいるんですよ~」
その一言に、弦は目を見開いた。
応援ありがとうございます!
16
お気に入りに追加
19
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる