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 白南風祭・当日、弦は千尋のクラスの列に並んだ。
 迷路は、そこそこ賑わっているようだ。
(赤い小鳥の人形が、無くなってしまうかもしれない!)
 弦は気を揉んだが、最後の一個というところで、手に入れることができた。
「こんなものを欲しがるとは。千尋も、まだまだ子どもだな」
 しかし、とたんに胸の中に倒れこんできた彼を思い出した。

 すらりとした手足に、柔らかい髪。
 そして、とても良い香りがした。
 子どもだとばかり思っていたが、いつの間にあんな……あんな……。

 ぼんやりとしたところに突然、男子生徒の悲鳴が教室内から響き、弦は我に返った。
「なぜ、迷路なのに悲鳴が?」
 次いで、げらげらと笑い声が聞こえる。
 何か仕掛けがあるのだな、と弦は考え、興味が湧いた。
 だが背後から、ささやき声が聞こえる。

『海江田さんだ』
『河島の先輩?』
『声、掛けてみるか?』
『いや、怖いって!』

(中の様子は気になるが、迷路に放り込まれる前に退散するか)
 弦は千尋のためにゲットしたストラップを、ポケットに入れた。
 そして列から出ようとしたが、有無を言わさず女生徒に背中を押された。
「河島くんの先輩ですよね? どうぞ、中に入ってください!」
「いや、俺は……」
「河島くんも、中にいるんですよ~」
 その一言に、弦は目を見開いた。

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