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しおりを挟む『先輩。あぁ、先輩!』
『好きだ……愛してる!』
「!?」
画面いっぱいに、抱き合って熱いキスを交わす男女の姿が映し出された。
空気が、一瞬のうちに凍りつく。
「え、あ、夕食、もうできましたから!」
食事時に見るラブシーンほど、気まずいものはない。
意識しないようにすればするほど、意識してしまう。
食卓についた頃には場面は変わっており、千尋はホッとした。
だが、どうしても頭から離れない、キスシーン。
そして、同じように、先ほど先輩の胸に抱かれた自分がここにいる。
たくましい腕、広い胸、熱い体温。
(やだ。僕ったら、どうしちゃったんだろ)
胸が、ドキドキする。
顔が、赤くなる。
「千尋」
は、と千尋は息を飲んだ。
真剣な、弦先輩のまなざし。
熱い視線。
差し伸べられた腕。
弦先輩。
僕の先輩。
僕は、先輩が大好き。
大好きだけど、好きっていうのは、そういうんじゃなくって!
「千尋、おかわり」
「あ、はい」
心のどこかで何かを期待した千尋の想いは、脳で認識する前に霧散した。
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