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しおりを挟む「……」
千尋を上に乗せたまま、弦は固まったように動かなくなった。
息を詰めている彼の心音が、千尋にひどく大きく聞こえてくる。
(どうしたんだろう、先輩)
でも、弦先輩の胸に抱かれるなんて久しぶり。
そんな甘酸っぱい思いが、千尋の胸に広がった。
幼い時、いつも抱きしめてくれた、温かい胸。
あの頃に比べて、ずいぶん広く分厚くなっている。
千尋もそれなりに体を作ったつもりだが、とても弦には及ばなかった。
(もう少し、こうやって甘えていたいな)
だが、これ以上すがりついていると、軟弱者と笑われそうだ。
「取ったぁ!」
千尋は弦の手からリモコンを奪うと、掲げて笑ってみせた。
赤くなり、顔を背ける弦の姿がそこにある。
いかにも先輩と後輩のふれあいだな、などと呑気な事を考えながら、千尋はリモコンのスイッチを入れた。
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