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 いらん、と突き返そうとしたが、女子たちは騒ぎながら、ドアの方へと向かっている。
 後を追うのも面倒だし、後で坂井の机の上に返しておこうと、その本は傍らに置いて弦は足を組んだ。
 読んでいた本は、すぐに結末が見えてしまったので、早々に閉じた。
「退屈だな」
 スクワットでもするかと立ち上がりかけた時、手に坂井の本が当たった。

「全く……」
 考えなしに、弦は薄い本をめくってみた。
 挿絵は少女マンガ風で、まったく趣味に合わない。
 だが、つまらんと閉じる寸前、とんでもない一文が目に飛び込んできた。

『僕、先輩のことが。ずっと前から好きだったんです!」

 ギョッとした文章の横には、絡み合う二人の挿絵が! 
(むッ、胸が無いところから察するに、これは男同士!?) 
 とんでもない、こんなもの読めるかと仰天しながらも、気になって仕方がない。
 ちらりぱらりと興味本位で読み進めると、あられもない情事の様子が延々と綴られている。

『先輩……あぁ、もっと強く抱いて!』

「いかん!」
 弦は、勢いよく本を閉じた。
「先輩とか……先輩とか……!」 
 どうしても、千尋と重なってしまうじゃないか! 
 本を急いで坂井の机に押し込むと、弦は教室から飛び出した。

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