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しおりを挟む朝、千尋は弦より、早く起き出す。
朝食の支度と、お弁当を用意するためだ。
大喰らいの先輩のために、千尋はお弁当を、いつも三つ用意していた。
ひとつは、自分のお昼。
ひとつは、弦のお昼。
そしてもうひとつは、弦の早弁用のおむすび。
とてもじゃないが昼まで腹が持たん、という弦だ。
そんな彼のために、千尋は弁当とは別に、大きなおむすびを二個作って持たせていた。
「あっ。そういえば弦先輩、今日から体育が柔道になる、って言ってた」
一限目の体育が柔道となると、いつもよりお腹が減るだろう。
おむすび二個では、足りないかもしれない。
そう考えた千尋は、自分用に作った弁当を、おむすびの代わりに弦のバッグへ入れた。
自分はたくさん食べる体質ではないので、お昼がおむすび二個でも大丈夫だ。
「先輩。お弁当、バッグに入れましたからね?」
「ああ」
先に、玄関から出る千尋。
二人そろって一緒に登校することは、滅多にない。
だが、そっと見守るように。
弦が、その後すぐに寮を出ることを、千尋はちゃんと知っている。
そんな不器用な愛が、まるで本当の家族のようで、千尋は嬉しかった。
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