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「本当に、よく還ってきてくれたね。未悠」
「健さんが、呼んでくれたから」
 健は、上半身を起こす未悠の体を支えた。
「痛まないか? 平気か?」
「もう、ほとんど何ともないんですよ。月齢は?」
「上弦に向かってるからな。傷の治りも、早まってるんだろうね」
 でも、もう少しだけ健さんに甘えていたいな。
 彼に体を預け、未悠は瞼を閉じた。
「健さん」
「何だい?」
「抱きしめて、くれますか?」
 柔らかな未悠の体を、健はそっと抱いた。
 壊れものを扱うように、大切に。
「未悠。愛してるよ」
 もう、すっかり馴染みになってしまった言葉を、健は苦も無く口にする。
「健さん。僕、お願いがあります」
 少し強く、未悠は健にしがみついた。
「ずっと、僕の傍にいて欲しいんです。どこにも、行かないで……」
 語尾は涙で濡れている。
 彼を慰めるように、健は優しくその髪を撫でた。
「傍に置いてくれる? もう一生、離れたくない」
「健さん……!」
 トラブルメーカーの私だが、未悠ならきっと大丈夫。
 一緒に、歩んでくれる。
 春の予感を含んだ風が、二人を包んだ。
 どこか梅の香りがするような、風だった。

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