カンバスに想いを込めて ～不幸なオメガを救い上げたのは……極道アルファ！？

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「作品には、普通タイトルが付いているものだろう。この絵のタイトルを、私は知らない」
「それは……。ちょっと恥ずかしいです」
「恥ずかしいタイトルなのか？　R18になるような？」
「違います、もう！」

　だったら、と徹はやんわりと樹里の耳元で、ささやいた。

「教えてくれ」

　甘い、低音ボイス。
　樹里は、この響きには抗えないのだ。
　恥ずかしかったが、思いきって告白した。

「タイトルは……『初恋』です」

　初恋。

　その言葉に、徹は思い出していた。
　カフェで会っていた頃の、樹里の姿を。

　明るく、優しい笑顔。
　一生懸命に働く、真摯な姿勢。
　だけど、時々ミスをしては、叱られていたっけ。

　学生？
　住まいは？
　バイト楽しい？

　そんなことを尋ねては、淡い喜びを噛みしめていたっけ。

「私の初恋は、樹里。君だよ」
「綾瀬さん？」
「君に会いたくて、毎日カフェに通った。懐かしいな」

　その言葉に、樹里の胸は喜びで、はちきれそうだった。