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 ひとしきり泣いた後、藍はぽつりぽつりと、自身の身の上について雅貴に語った。
 母が出て行ったあと、残された継父が、自分を慰みものに使うようになったこと。
 そればかりでなく、知人に売春を強要するようになったこと。
 そのうち、タトゥーを施した男にまで犯されるようになったこと。

「このままじゃ僕、本当に風俗へ売られちゃうって思って。それで……」
「それで、雨の中を裸足で。傘もささずに」
 藍は、膝を抱えてうずくまった。
(とうとう、話しちゃった。雅貴さん、僕のこと嫌いになったよね)
 こんな汚れた子、傍に置きたくないよね。
 だが、雅貴は藍に手を差し伸べた。
 肩を抱き、髪を撫でた。

「よく、話してくれた。明日、一緒に心療内科のドクターに診てもらおう」
「……雅貴さん?」
「前にも話したが、止まない雨はない。君の心に降る雨も、いつかは必ず上がる」
「う、うぅ」
「私に、そのお手伝いをさせてくれないか?」
「雅貴さん」
「何度でも言おう。君の家は、ここだ。どこにも行かなくて、いいんだ」
 雅貴は藍を横たえて、その背中を静かにぽんぽんと叩いた。
 藍の嗚咽が止み、深い眠りに落ちるまで、優しく叩き続けた。

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