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しおりを挟む昨晩は料理のことなど話していた雅貴だったが、今夜は藍に諭すような会話をしていた。
「雨は、もう上がったよ。君の心に降る雨も、いつかは必ず上がる」
「いつ、雨はあがるんでしょうか」
「それは解らない。ただ、焦らなくてもいい」
自分のペースで走っていれば、雲もいつか晴れる。
そんな優しい雅貴の言葉に、藍の涙腺は再び緩んだ。
「君は、よく泣くね」
「すみません」
「泣きたいときには、泣いていいんだ。それが許されているのなら」
「えっ」
私は、泣かない。
いや、泣けないんだ。
平家の当主は、おいそれと泣くことを許されない。
「だから、少し君がうらやましい」
「そんな。……ごめんなさい」
「謝ることじゃない」
泣きたいことも、ないしね。
そう言って、雅貴は微笑んだ。
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