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しおりを挟む「隼人さんと僕とで、旅行って。おじいちゃんの田舎に、帰省だったんだね」
「うん。婚約の報告にね」
隼人と比呂の二人は、仕事の合間に日取りを作って自動車を走らせていた。
車窓の外は、次第に懐かしい風景になっていく。
以前は紫織も一緒だったが、今は彼も達夫と共に、二人の到着を待ってくれている。
ステアリングを握ったまま、隼人は言葉を継いだ。
「新婚旅行も、ちゃんと控えてるから」
「えへへ。嬉しいな!」
「実はね。今回おじい様宅には、私の両親もいるよ」
「えっ! き、緊張しちゃう……!」
それは大丈夫、と隼人は笑顔だ。
「婚約を知らせたら、比呂くんに早く会いたい、って。速攻で帰国したんだ」
『隼人のパートナーになってくれる子なんて、今後は絶対に現れないわよ』
『大切にして、逃げられないようにしなさい』
こんな両親の言葉に、比呂は吹き出した。
「あはは! 僕は、逃げたりしないよ!
「でも、比呂くん。本当に、これで良かったのかい?」
隼人は今でも、時々考えていた。
猫神修行を辞め、長命も捨て、共に生きて果てる道を選んでくれた、比呂。
本当に、これで彼は幸せなのだろうか。
だが比呂は、そんな隼人に明るく答えた。
「隼人さん。時の舟には、二人で乗ろうよ」
同じ時代を、時の流れを、二人で越えて行こう。
比呂の、力強い言葉だ。
「そうか。そうだね!」
「レッツ・ゴーだよ!」
信号が変わり、隼人はアクセルを踏んだ。
二人を乗せた自動車は、未来へ向けて軽快に走り始めた。
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