時の舟には二人で乗ろう~自分を隠して偽り生きるイケメン俳優とモフモフあやかし少年は、愛を通して心を取り戻す~

大波小波

文字の大きさ
上 下
229 / 230

4

しおりを挟む

「比呂くん。ロケの前に、私と二人で旅行してくれないかな?」
「えっ?」
 隼人の申し出は嬉しい比呂だが、急にそんなことを言い出す彼は、少し変だ。
「突然どうしたの? いつもと違うね」
「桐生さんは、酔っているんだな。突発的に、旅行に行きたい、だなんて」
 比呂も青原も、普段の言動とは違う隼人を怪しんでいる。
 しかし彼は、杯を置いて、まずは青原に反論した。

「突発的だなんて、とんでもない。これは、熟慮した結果ですよ」
 思わぬ反撃を食らい、ポカンとしている青原を置いて、隼人は比呂を見た。
 熱いまなざしで、大切に想いを告げた。
「比呂くん、愛してるよ。私と、結婚してください」
「え……えぇええッ!?」
「返事は? 比呂くん」
「あ、う。も、もう! 言わなくても、解ってるくせに!」
「それでも、聞きたい。君の口から、ハッキリ答えて欲しいんだ」

 酔いも手伝って、比呂の顔は真っ赤だ。
 3秒後、彼もまた大切に言葉にした。
「愛してます、隼人さん。僕と、結婚してください」
 はにかんで、微笑み合う二人の間に挟まれて、青原は目を白黒させている。
「まさか、プロポーズの立会人にさせられるとは!」
「青原さんには、もう一つ役がありますよ」

 隼人は姿勢を正して青原に頭を下げた。
「私と比呂くんの、仲人になっていただけないでしょうか」
「え……えぇええッ!?」
「青原さん、僕とセリフが同じだよ?」
 これはこれは、と青原は頭を掻いた。
「大役だな。だが、ぜひとも受けさせてもらうよ」
「ありがとうございます!」
「ありがとう、青原さん!」

 改めて、三人で乾杯した。
 交わす笑顔は、はちきれそうに幸せだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【完結】ただの狼です?神の使いです??

野々宮なつの
BL
気が付いたら高い山の上にいた白狼のディン。気ままに狼暮らしを満喫かと思いきや、どうやら白い生き物は神の使いらしい? 司祭×白狼(人間の姿になります) 神の使いなんて壮大な話と思いきや、好きな人を救いに来ただけのお話です。 全15話+おまけ+番外編 !地震と津波表現がさらっとですがあります。ご注意ください! 番外編更新中です。土日に更新します。

彼は罰ゲームでおれと付き合った

和泉奏
BL
「全部嘘だったなんて、知りたくなかった」

処理中です...