時の舟には二人で乗ろう~自分を隠して偽り生きるイケメン俳優とモフモフあやかし少年は、愛を通して心を取り戻す~

大波小波

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「比呂くん。ロケの前に、私と二人で旅行してくれないかな?」
「えっ?」
 隼人の申し出は嬉しい比呂だが、急にそんなことを言い出す彼は、少し変だ。
「突然どうしたの? いつもと違うね」
「桐生さんは、酔っているんだな。突発的に、旅行に行きたい、だなんて」
 比呂も青原も、普段の言動とは違う隼人を怪しんでいる。
 しかし彼は、杯を置いて、まずは青原に反論した。

「突発的だなんて、とんでもない。これは、熟慮した結果ですよ」
 思わぬ反撃を食らい、ポカンとしている青原を置いて、隼人は比呂を見た。
 熱いまなざしで、大切に想いを告げた。
「比呂くん、愛してるよ。私と、結婚してください」
「え……えぇええッ!?」
「返事は? 比呂くん」
「あ、う。も、もう! 言わなくても、解ってるくせに!」
「それでも、聞きたい。君の口から、ハッキリ答えて欲しいんだ」

 酔いも手伝って、比呂の顔は真っ赤だ。
 3秒後、彼もまた大切に言葉にした。
「愛してます、隼人さん。僕と、結婚してください」
 はにかんで、微笑み合う二人の間に挟まれて、青原は目を白黒させている。
「まさか、プロポーズの立会人にさせられるとは!」
「青原さんには、もう一つ役がありますよ」

 隼人は姿勢を正して青原に頭を下げた。
「私と比呂くんの、仲人になっていただけないでしょうか」
「え……えぇええッ!?」
「青原さん、僕とセリフが同じだよ?」
 これはこれは、と青原は頭を掻いた。
「大役だな。だが、ぜひとも受けさせてもらうよ」
「ありがとうございます!」
「ありがとう、青原さん!」

 改めて、三人で乾杯した。
 交わす笑顔は、はちきれそうに幸せだった。

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