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しおりを挟む応接室に、隼人は青原と二人きりだった。
カラーレンズの眼鏡を掛けているので、青原の表情は読みにくい。
『青原さんは、他人に考えを悟られるのが、嫌いなのよ』
『あの鋭い眼光で、スタッフや俳優を、怖がらせないようにするためだ』
『いいえ、熟考している時に、外の余計な情報を入れないためなの』
青原の眼鏡については、こういった様々な噂が絶えない。
隼人もまた、彼の素の眼差しを、間近で見たことがない俳優の一人だった。
「私は、自分を見失いつつありました。そこで、自分を見つめ直す旅に出たのです」
「なるほど。具体的には?」
「祖父を訪ね、昔の話などを聞きました。曽祖父の人生なども」
「自分のルーツを、たどったわけか」
はい、と隼人は答えた。
これらは、全て事実だ。
嘘ではないので、すらすらと口から出てきた。
ただ、重要なポイントは、伏せざるを得なかった。
(猫神様見習いの比呂くんと、猫又の紫織さん。彼らの存在を話しても、信じてはいただけないだろう)
それどころか、見え透いた嘘をつくな、と青原を怒らせてしまうかもしれないのだ。
隼人は、慎重に言葉を選んでいた。
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