時の舟には二人で乗ろう~自分を隠して偽り生きるイケメン俳優とモフモフあやかし少年は、愛を通して心を取り戻す~

大波小波

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 背中側から優しく隼人に抱かれ、比呂の目には涙が浮かんできた。
(ヤバい。また、泣けてきちゃった)
 幸い顔が見えないので、隼人にバレる恐れはない。
 比呂は、ただ静かに涙をこぼした。

 大好きな、隼人さん。
 そして、僕のことを大好きと言ってくれる、隼人さん。
 そんな彼が確実に、比呂より先に天に召される。
 それを思うと、涙があふれて仕方が無いのだ。

(隼人さんが、僕の前からいなくなっちゃうなんて)
 耐えられそうもない。
 しかも、彼を見送った後も、猫神様として永劫の時を歩まなければならないなんて。
 嗚咽まで漏れそうになり、比呂は必死でこらえていた。
 舌先を強く噛み、涙を止めようと必死でこらえていた。

 比呂の細い肩が、少し震えている。
 気付いた隼人は、彼を抱く力を強くした。
「どうしたの、比呂くん。何か、あった?」
 返事は無く、ただ首が横に振られるだけだ。
「悩みがあったら、相談して欲しいな」
 返事は、やはり無かった。

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