時の舟には二人で乗ろう~自分を隠して偽り生きるイケメン俳優とモフモフあやかし少年は、愛を通して心を取り戻す~

大波小波

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1話 新しいステージ

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 比呂の疲れや体力は、幸いなことに早く癒えた。
「体に、気を付けてな」
「おじいちゃんも、ね」
「桐生。時々、連絡をするから」
「よろしく、紫織さん」

 紫織と達夫に見送られ、隼人と共にマンションに帰ると、彼はさっそく腕を伸ばした。
「さぁ、隼人さん。僕の手を握って。一か月前へ、逆戻りするよ」
 だが隼人は、その手を取らなかった。
「比呂くん。私は、このまま進もうと思うんだ」
「えっ」
「時間を遡らず、一ヶ月間まったく仕事をしなかった桐生 隼人でありたい」

 比呂は、慌てた。
 そうすると、隼人の信用はガタ落ちで、今後の活動にも影響が出る、と考えたからだ。
「僕なら、大丈夫だよ!? たった一ヶ月、時間を遡るくらいなら、疲れたりしないよ!?」
「心配だよ」
 比呂くんのパワーは、猫神様になるために蓄えておいて欲しい。
 そう語り掛ける隼人のまなざしは、とても優しい。

「それに。これで私を使わなくなるスポンサーなら、もう必要ない」
 私は、私らしく生きて行きたいんだ。
 こんなことを言い出す隼人の目は、凛々しく輝いている。
 その決意に、比呂はうなずいた。
「解ったよ。じゃあ、これからも頑張ろうね!」
「ありがとう、比呂くん」
 二人は微笑み合い、固い握手を交わした。

 
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