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しおりを挟む桐生家代々の墓は、達夫邸から自動車で5分程度の場所にある。
そこで隼人が車を出そうとすると、いきなり達夫に叱られた。
「たったあれだけの距離くらい、自分の足で歩きなさい!」
「しかし。車で5分なら、徒歩で30分はかかります」
「おじいちゃん。後期高齢者なんだから、車で行こうよ」
「私はいつも、墓参りには歩いて行くんだよ。比呂くん」
結局、徒歩で30分かけることにして、4人は出発した。
「隼人さん。お水、重くない? 僕、途中で交代するよ」
「ありがとう、比呂くん。でも、これくらい平気だ」
隼人は、墓石を掃除するための水を、たっぷり用意して運んでいる。
「若い者がいると、念入りに磨けるな。さすがの私も、いつもは水鉢に入れる分しか持てないよ」
そんなことを話しながら、歩いた。
不思議なことに、ただ歩くだけなのに楽しい。
お喋りをし、時々空を見上げては雲を眺める。
風を感じ、鳥の羽ばたきを聞く。
「ああ、和むなぁ……」
「あれっ? 紫織さんが、珍しいこと言ってる!」
「俺だって、たまには、のどかな気分になるさ」
「吉永さんも、出版社では忙しかったでしょうからね」
「ふん。俺は桐生と違って、仕事人間じゃないぞ」
若者たちの会話に微笑みながら、達夫ものんびりと歩いていた。
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