133 / 230
3
しおりを挟む「この国の愚かな人間は、他国に戦争を仕掛けるようになった。100年くらい、前かな」
紫織の言葉に、隼人は反応した。
「比呂くんが、生まれた頃だね」
「吉永さんは、150歳だそうだよ」
比呂は、その100年間に相当な苦労をしてきたが、紫織は違った。
「軍需企業に、政治家。そして、軍の上層部。戦争で金儲けができる種類の人間は、いくらでもいた」
そして紫織は、そのような人間の手を渡り歩き、ぬくぬくと過ごしたのだ。
だが、彼にも誤算があった。
「軍高官の元にいた時に、敗戦しちまった。奴は戦犯として、あっという間に逮捕されたのさ」
巻き込まれては大変と、紫織は屋敷を出た。
そして、外の世界に驚いた。
解るよ、と比呂はうなずいた。
「街は空襲で、焼け野原。まだ焦げ臭い感じがしてて、身元が解らない遺体が、隅に転がってて」
「人間はみんな、飢えていた。その辺をさまよってるイヌやネコまで、とっ捕まえて食ってたっけな」
比呂と紫織の会話に、隼人は震撼した。
「話には聞いたことがあったが、それほど悲惨だったとは……」
ネコのままでは食べられてしまうが、ヒトの姿になるには妖力を使う。
気力体力をなるべく使わないようにするため、紫織はネコの正体を明かしたまま、隠れ逃げ惑った。
「そして次第に痩せ衰えて、もうヤバいな、と思っていたところに……」
「私の、ひいおじいさんに出会った、というわけですか」
そういうことだ、と紫織は瞼を閉じた。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる