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しおりを挟む比呂の口を手のひらで塞いだまま、隼人は早口で訴えた。
「吉永さん。私は、逃げも隠れもしません。ですから、比呂くんの顔などを公表することだけは、やめてください」
「ほう? 比呂を、庇うのか?」
挑戦的な紫織の声音に、隼人は思いつく限りの条件を、差し出した。
「金銭なら、要求通りいくらでも払います。私が気に入らないというのなら、芸能界を引退しても構いません。それから……痛い!」
「隼人さん! こんな奴の言いなりになっちゃ、ダメ!」
口をふさいでいた隼人の手を噛んで、比呂が参戦してきたのだ。
鼻息も荒く、比呂は紫織を逆に脅してきた。
「もし隼人さんのことを記事にしたら、僕も吉永さんの秘密をバラすからね!?」
「比呂くん。吉永さんの秘密、って?」
「隼人さん。吉永さんの正体は、猫又なんだよ!」
ぺろっと喋ってしまった比呂に、紫織は呆れて首を振った。
「やれやれ。すでに、秘密じゃなくなってるが?」
「あ、しまった! いや、あの。そうだ! SNSで、言いふらすから!」
「21世紀の現代社会で、猫又の存在を、誰が真に受けるかなぁ?」
「う……」
黙ってしまった比呂に代わって、隼人が重ねて請うた。
「吉永さん、条件をお願いします。私にできることなら、何でもします!」
真剣な目をした隼人を、紫織はしばらく見ていた。
そして、急に視線を逸らすと、息を吐き言った。
「まぁ、何だ。まずは風呂にでも、入って来たらどうだ?」
「えっ?」
話はそれからだ、と紫織は再びリビングから出て行ってしまった。
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