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「お前、俺が怖くはないのか?」
「別に!? 吉永さんだし!」
 待てよ、と紫織は考えた。
「なぜ俺を、吉永 紫織と思うんだ?」
 自分は今、正体を現した猫又。
 ヒトの姿とネコの姿を、イコールで結びつける発想は、普通ならば考え付かないのでは?

 紫織の指摘に、比呂は焦った。
「そ、それは、その。吉永さんが寝てたところに、いるし?」
「俺が吉永を、まるっと食ってしまった、という可能性は?」
 往生際の悪い、紫織の態度だ。
 比呂は、大きな声を上げていた。
「そんなわけ、無いじゃん! 僕、吉永さんから二股の尻尾が生えてるとこ、見たんだから!」

 そこまで、証拠をつかまれているとは……!
 そう、紫織は苦々しく思ったが、すると今度は開き直った。
「バレてしまったのなら、仕方がない。俺は確かに、化け猫だ」
「やっぱり!」
「もっと俺を、恐れろ! 150年以上も生きている、猫又なんだぞ!?」
「150年!?」
 ふわぁ、と比呂は口をポカンと開けた後、つぶやいた。
「すごい。僕でさえ、100年くらいなのに……」
 その言葉を、紫織は聞き逃さなかった。

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