26 / 230
1話 これは夢なんだし
しおりを挟む握った比呂の手は、温かかった。
しっかりと、ヒトの皮膚、肉、骨の感触があった。
しかし、隼人はこう考えていた。
(多分これは、夢だ)
目の前で、小さなネコに変わって見せた、比呂。
その不思議な体験を、そのまま鵜呑みにするほど、隼人は無邪気ではなかった。
(おそらく私は、慣れない動画配信で疲れて、ソファでうたた寝をしているに違いない)
そして、夢ならば、と少々大胆な行動をとり始めた。
「ああ、疲れたな。比呂くん、一緒にコーヒーブレイクといこう」
「え? う、うん。いいけど……」
覚悟を決めて素性を明かしたというのに、これまで通りに振舞う隼人に、比呂はとまどった。
(隼人さん、僕のこと怖くないの? 気持ち悪くないの?)
「何か、甘いものも欲しいな。お茶菓子は、あるかい?」
「昨日焼いた、パウンドケーキがあるよ」
それはいい、と隼人は素敵な笑顔を比呂によこした。
「こっちへおいで。一緒に、食べよう」
こうなるともう、比呂は嬉しくて仕方がない。
喉をゴロゴロ慣らす勢いで、隼人にくっつきリビングのソファへ向かった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる