時の舟には二人で乗ろう~自分を隠して偽り生きるイケメン俳優とモフモフあやかし少年は、愛を通して心を取り戻す~

大波小波

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1話 これは夢なんだし

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 握った比呂の手は、温かかった。
 しっかりと、ヒトの皮膚、肉、骨の感触があった。
 しかし、隼人はこう考えていた。
(多分これは、夢だ)
 目の前で、小さなネコに変わって見せた、比呂。
 その不思議な体験を、そのまま鵜呑みにするほど、隼人は無邪気ではなかった。
(おそらく私は、慣れない動画配信で疲れて、ソファでうたた寝をしているに違いない)
 そして、夢ならば、と少々大胆な行動をとり始めた。

「ああ、疲れたな。比呂くん、一緒にコーヒーブレイクといこう」
「え? う、うん。いいけど……」
 覚悟を決めて素性を明かしたというのに、これまで通りに振舞う隼人に、比呂はとまどった。
(隼人さん、僕のこと怖くないの? 気持ち悪くないの?)
「何か、甘いものも欲しいな。お茶菓子は、あるかい?」
「昨日焼いた、パウンドケーキがあるよ」
 それはいい、と隼人は素敵な笑顔を比呂によこした。
「こっちへおいで。一緒に、食べよう」
 こうなるともう、比呂は嬉しくて仕方がない。
 喉をゴロゴロ慣らす勢いで、隼人にくっつきリビングのソファへ向かった。

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