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「素敵だったよ、白川くん」
「叶さん……」
 ウェットティッシュで瑞樹の体を拭いながら、誠は意地悪く訊いてきた。
「白川くんは? どうだったかな?」
「まだ少し、怖い、です……」
 気持ち悦すぎて、怖い。
 自分が自分でなくなる感覚が、怖い。

 そんな瑞樹の不安に、誠はうなずいた。
 頬に手のひらを当てて、かすれた声で言った。
「怖いのに、私に付き合ってくれて、ありがとう」
「あ、いいえ……」
「大丈夫。そのうち、何も考えられなくなるぞ」
「そう、でしょうか」
「そうとも」

 そして、誠の笑顔がそこにある。
 まだ熟れたままの思考で、瑞樹は薄く微笑み返した。
 何だろう、この感じ。
 今までの、叶さんへの気持ちが、別の何かに変わったような。
 ただそれは、嫌悪とは違う。
 そのことに、ほっとした。

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