半グレの私はなぜピュアなハウスキーパーをこんなに深く愛してしまったんだろう

大波小波

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「ただいま」
「お帰りなさい!」
 マンションに着くと、いつものように杏が待っていてくれる。
「お風呂にしますか? お食事が先ですか?」
「少し冷えたな。バスを使うよ」
 バスタブに浸かっていると、いつものように杏が入ってきてくれる。
「背中、流します」
「ありがとう」
 虎の彫り物のある背中を、怯えもせずに洗ってくれる。
 バスルームから出ると、温かな食事が待っている。
「今夜は冷えるので、おでんにしました」
「嬉しいな。食べたかったんだ」
 熱燗をお供に、いくらでもお腹に入る、杏のおでん。
(ああ、幸せだ)
 独りで、そこかしこに睨みを利かせていたころには、絶対に味わえなかった幸福感。
 そして、大きなベッドに入るのも二人で、なのだ。
「杏。ホワイトデーに、プレゼントがあるよ」
「真さんには、バレンタインデーに素敵なプレゼントをもらいましたよ?」
「あれでも、足りない。君には、もっともっと幸せになってもらいたい」
 それが、私の幸せでもあるのだから。
 真は、杏にキスをした。
 ホワイトデーまで、あと一週間。
「いいか?」
「もう。真さん、昨夜も……っあ、ぁん……」
「愉快な計画に少々のぼせていてね。熱を抜きたいんだ」
「ん、ぅん。あ、あぁ、はぁ、あ……」
 杏の腕が、真の首にまわされる。
 そのぬくもりに、真はうっとりと酔った。
 幸せという名の温かさに、浸った。

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